人やチームのマネジメントの経験は、グローバル人材市場では非常に重宝される。
特に30代、40代のシニアレベルになるとチームのマネージメントスキルがあると、その人の専門分野(スペシャリティ)にプラスして評価される。
それではグローバルの人材マーケットで求められるマネージャー像とは具体的にどのようなものか見ていきたい。
1.マネージャーとプレイヤーの役割の違いとは?
マネージャーとプレイヤーには決定的な違いがある。
それは、プレイヤーは自分自身の仕事の生産性を高め、アウトプット(成果)を最大化することに対して、マネージャーはチームの成果を最大化することにある。
チームメンバーがいない若いチームでは、マネージャーがプレイヤーも兼ねる”プレイイングマネージャー”となるケースもあるが、基本的にマネージャーは監督するチームが最大効率でアウトプットを発揮することに注力する。つまり、プレイヤーが常に自分に問いかけることが
「自分自身の生産性を上げるためにはどうしたらよいか?」
であるとしたら、マネージャーは
「チームの生産性を最大限上げるためには、一人ひとりがどのような役割を持てば良いか?」という問いにシフトする。
2.マネージャー未経験の人がやってしまうことは?
はじめてマネージャー(管理職)になる人は、これまでプレーヤーとしてハンズオンでやっていた仕事をメンバーに任せなければいけない。
マネージャーになったばかりの人は、ついついプレーヤー時代のように自分が手を動かしてしまうが、チームが自立し、内発的に生産性を上げるサイクルを生むようになるためには、マネージャーが手を動かすことはその妨げになってしまう。もちろん、若いジュニアレベルのメンバーを育てなければいけない際には、自分自身が手を動かして手本を示すことも必要だが、慢性的に自分が手を動かすのではなく、チームのためにあえて”手放す”ことが必要だ。
マネージャーとなった今はチームを俯瞰し、全体としてのアウトプット最大化に考え方を切り替えなければいけない。
ついついプレイヤーが手を動かしてしまうという循環に陥る理由としては、プレイヤー時代に非常に優秀で成績を上げてきたからかもしれない。
また、物事が進んでいないのが不安に感じるからからかもしれない。
しかし、自分が手を動かすということはあくまで最終手段で、チームのKPIとその手段について、具体的なものを示すべくメンバーそれぞれと向き合う必要がある。
マネージャーは補完的に動くことが原則だ。
3.優秀なマネージャーがチームの成果を最大化するためにすべきこと
①メンバーを知る
メンバーを知るためには、コミュニケーションが必要だ。そのコミュニケーションの手段として1 on 1が挙げられる。つまり、メンバー1人1人とのフェーストゥフェースの定期的なキャッチアップだ。
チームのメンバーが多い場合は1 on 1という選択肢は時間的に難しくも思えるが、それでも1 on 1は実施したほうが良い。複数人間でのコミュニケーションではメンバー1人1人の真意を知ることは困難だからだ。
また、その人が得意としていること、その人が貢献したいこと、主体性を発揮したいこと(KPI)といったヒアリングが後述する役割の組み換えすることに繋がる。
1 on 1の頻度は毎週でなくとも、たとえわずか15分であってもどこかで時間を確保したほうが良い。
それほどチームの役割分担は、メンバー1人1人の個性にフォーカスし、強みに根ざしたチームこそが生産性を最大化することであるからだ。
それを成し遂げるのにコミュニケーションは不可欠である。
②役割の組み換えをする
人には個性があり、専門分野、コミュニケーションの取り方、学習方法、などがある。
それらをつぶさに観察し、どのような役割を1人1人に持ってもらうかを決めていく必要がある。あるメンバーの強みは、あるメンバーの弱みの補完的に動けることもある。また、あるメンバーの個性は、他のメンバーとあわせると相乗効果を生むこともある。一見、凸凹のチームのようだが、見方を変え、全体を俯瞰してチームを見たときに全メンバーの配置がピタッとはまることがあるのだ。
③個人を尊重する
一時期GoogleのオフィスがクリエイティブだとよくTVで取上げられていた。特に印象的だったのは、一人ひとりに個室が提供されていて、好きな服を着て、出社し、好きなように個室をデコレーションしている。
Googleは、「個人が一番リラックスしてアウトプットできる環境にするためにはどうすればよいか」、に焦点を当てている。
「個人を尊重する」、つまり、そのメンバーがどのような環境を求めているかを整えることもマネージャーの仕事である。
時には、人事部(HR)に交渉し、働き方改革を推進してもらうこともあるだろう。オフィスにYUSENを流してもらうことかもしれない。
究極を言うと、マネージャーの仕事とはメンバーのために働くことなのだ。
そして、自分の成果とは、一人ひとりがアウトプットを出しやすい環境にして、成功させることなのである。
4.マネージャーの究極の仕事とは
よく「あのマネージャーは本当に部下の面倒見が良くて優秀だ」というのを聞くことがある。しかし一文を読んだだけでは、そのマネージャーが優秀かどうかということは分からない。
なぜなら、面倒見が良い=チームの生産性が高い ということには直結しないからだ。面倒を見るということは生産性を上げるための手段に過ぎず、面倒を見すぎて、自律できないチームが多くあることも事実としてある。
スポーツに例えると分かりやすいかもしれない。ビジネスでいう利益をスコアに例えると、スコアを最大化して勝利をするためには今いるメンバーの配置をどのようにすればよいだろうか?
その組織、チームに責任のあるKPIを実行するには、どのような役割を一人ひとりに持たせれば良いだろうか?
新しくマネージャーになった人には、このような思考の転換をする必要があるだろう。
かつての私が知っているマネージャーの1人に、「優秀なメンバーがいないと成果を上げれない」と強引にメンバーを入れ替え続けるマネージャーがいた。私にとって、その状況はとにかく非合理的にうつった。なぜならパーフェクトな人材など存在しないが、そのチームとして完璧な状態は存在するからだ。
一人ひとりがスーパープレイヤーという状態は個人に依存してしまっている状態で、チームとして完璧な状態とは言えない。うまく組み合わせを変えて、役割分担を最適化することこそがマネージャーの役割であり、マネージャーの仕事の醍醐味である。そのためには、人間を理解すること、個人に耳を傾けること、最後に自分のチームを信じることが大切である。